【警告】冬はただ寒いだけではない。「炎症」と「死」の季節である。
——漢方精神科医が解き明かす、冬季に心身が壊れる本当の理由と、生存戦略——
はじめに:あなたの不調は「気のせい」ではなく「冬のせい」
「最近、なんとなく調子が悪い」 「朝、起きられないし、甘いものばかり食べてしまう」 「肩こりがひどく、胃の調子も悪い」 「そして、なんとなく『死』の気配を感じる」
精神科医として、また漢方医として日々診療にあたる私の実感として言わせてもらえば、それはあなたの心が弱いからではありません。 冬という季節が、あなたの身体に**「強力なデバフ(能力低下魔法)」**をかけているからです。
古代中国では、2月の節分に「鬼」が出ると恐れられました。「鬼」とは中国語で「死者」を意味します。 現代医学の言葉に翻訳すれば、冬は**「炎症性サイトカイン」という名の鬼**が体内を暴れ回り、心身を蝕む季節なのです。
今回は、最新の医学的エビデンスと東洋医学の知見を融合し、この過酷な「冬の魔物」から心身を守るための戦略を提示します。
1. 「脳が風邪を引いている」:冬季うつの正体
冬になると、「非定型うつ症状」と呼ばれる特有のサインが現れます。
過眠: いくら寝ても眠い。
過食: 炭水化物や甘いものが無性に欲しくなる。
鉛様麻痺: 手足が鉛のように重く、動けない。
拒絶過敏性: 他人の言葉に過剰に傷つく。
これらは単なる「気分の落ち込み」ではありません。 最新の研究では、冬になると人体は**「炎症モード」**にスイッチすることが分かっています。感染症から身を守るために、身体が意図的に免疫(IL-6, CRPなど)を活性化させるのです。
この炎症物質が脳に達すると、**「シックネス・ビヘイビア(病気行動)」を引き起こします。「動くな、寝てろ、エネルギーを温存しろ」という脳からの命令です。 つまり、冬のうつは「脳が炎症を起こしている状態(脳の風邪)」**なのです。気合いで治るものではありません。
【対策】
光を食べる: 網膜への光刺激は、脳の抗炎症薬です。朝起きたらカーテンを開け、可能なら高照度光療法(ブライトライト)を導入してください。
責めない: これは生物学的な「冬眠欲求」です。自分を責めることで、さらにストレスホルモン(炎症の燃料)を注がないこと。
2. 「中風」の科学:なぜ冬に血管が切れるのか
東洋医学では脳卒中を「中風(風に当たる)」と呼びます。 冷たい風に当たっただけで倒れるなんて大げさだと思うかもしれません。しかし、これは現代の循環器内科学で言う**「コールドショック・レスポンス」**そのものです。
寒冷刺激を受ける。
交感神経が爆発的に興奮する。
全身の血管が収縮し、血圧が急上昇する(200mmHg超も珍しくない)。
血小板が凝集しやすくなり、血栓ができる。
その結果が、脳卒中であり、心筋梗塞です。 さらに日本の住宅は「世界一寒い」と言われるほど断熱性が低く、暖かい部屋から寒い脱衣所へ移動するだけで、心臓に致死的な負荷(ヒートショック)がかかります。 1月・2月に救急車のサイレンが鳴り止まないのは、この**「温度差という凶器」**のせいです。
【対策】
「温度のバリアフリー」: 家の中の寒暖差をなくすことが、サプリメントよりも効く「命の薬」です。脱衣所やトイレを温めてください。
3. 「肺-脳連関」:PM2.5と黄砂の複合汚染
冬は呼吸器にとっても受難の季節です。 低温乾燥で気道のバリア機能が低下したところに、インフルエンザウイルス、大陸からのPM2.5、そして気が早い花粉が襲いかかります。
ここで重要なのは、**「肺の炎症は脳へ飛び火する」**という最新知見です。 PM2.5などの微粒子による肺の炎症は、血流に乗って全身に広がり、脳の炎症(神経炎症)を引き起こし、うつや不安を悪化させることが示唆されています。 「空気が悪いと気分が塞ぐ」のは、比喩ではなく物理的な反応なのです。
4. 「鬼門」の2月・3月:自殺のパラドックス
1年の中で最も警戒すべきは、寒さが底を打つ1月ではなく、春の兆しが見え始める2月〜3月です。これを**「自殺の魔の季節」**と呼びます。
なぜか? 日照時間が増えると、脳内の「活動エネルギー(ノルアドレナリン等)」は先に回復します。しかし、「悲観的な思考(気分)」の回復は遅れます。 このタイムラグによって、**「絶望したまま、死ぬための行動力だけが戻ってくる」**という最悪の乖離(Activation Syndrome)が生じるのです。
若い女性や、気候変化に敏感な層(気象病持ち)は特に注意が必要です。三寒四温の激しい気圧変動(爆弾低気圧)が、自律神経をジェットコースターのように揺さぶり、衝動性を高めます。
5. 漢方医からの提言:「閉蔵(へいぞう)」のススメ
東洋医学の聖典『黄帝内経』には、冬の過ごし方がこう書かれています。 「早寝遅起きし、日光を待って活動せよ。志(精神)を伏せて、エネルギーを漏らすな(閉蔵)」
現代社会はこれを許しません。冬でも夏と同じように働き、受験をし、決算に追われます。この**「生物学的リズムと社会的リズムのズレ」**こそが、現代人の冬の不調の元凶です。
【最終結論:冬の生存戦略】
「冬眠モード」を許可する: パフォーマンスが落ちるのは仕様(スペック)です。80%の力で維持できれば合格点としましょう。
「熱」と「光」をマネジメントする: 薬を飲む前に、室温を上げ、朝の光を浴びてください。これらは生物学的な「基本OS」を正常化させる最強の介入です。
「清浄」を保つ: 部屋が散らかっていると、ただでさえ弱っている脳の処理能力(メモリ)を食いつぶします。環境ノイズを減らすことは、メンタル防衛の第一歩です。
冬は必ず終わります。 しかし、ただ耐えるのではなく、この季節特有の「身体の理(ことわり)」を知り、賢くやり過ごすこと。 それが、春を健康に迎えるための唯一の道です。 どうか、ご自愛ください。
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