2026年1月15日木曜日

一生歩ける体を作る!整形外科的ライフコースと予防医学の基礎知識

 

一生歩ける体を作る!整形外科的ライフコースと予防医学の基礎知識

はじめに:ライフコースは大切

「整形外科」や「身体の予防医学」についてお話しします。心身一如であり例えば脳が疲れれば身体も疲れたように感じますし、体が疲れても心が疲れたように感じます。気分障害や抑うつと痛みには関連が深く治療法も薬も似たような薬を使う場合があります。心身一如と言いますが「精神と身体は密接につながっている」と保険や福祉の現場では観察されます。心が弱れば体も動かなくなり、体が動かなくなれば心も塞ぎ込みます。

今回は、人生という長い道のり(ライフコース)を見据え、「一生自分の足で歩き続けるため」**に知っておくべき身体の変化と、その対策について解説します。

1. 予防医学の基本:「戦わずして勝つ」

まず、医学における「予防」は大きく3つに分けられます。

  1. 一次予防: 病気にならない(健康増進、予防接種など)
  2. 二次予防: 病気を早期に発見し、治す(健診など)
  3. 三次予防: 再発や悪化を防ぐ(リハビリ、社会復帰)

「二次予防はもう病気じゃないか」というツッコミはあるかもしれませんが、重要なのはそこではありません。 孫子の兵法に**「戦わずして勝つ」「勝つべからざるを為して、敵の勝つを待つ(まず負けない態勢を作る)」**という言葉があります。医療も同じです。怪我をしてから治すのではなく、そもそも怪我をしない体、後遺症を残さない体を作っておく。これが最大の勝利です。

2. 人生のマイルストーン:体はこう変化する

人間の臓器や機能のピークは、おおよそ**20歳前後(1822歳)**と言われています。その後、体は歴史を刻みながら変化していきます。精神科医の視点から見た「体の曲がり角」を整理してみましょう。

20代後半】徹夜がつらくなる

かつて「24時間戦えますか」という時代がありましたが、あれは一種の興奮状態(躁的状態)で無理やり動かしていただけです。脳はやる気でも、20代後半からは身体的・生理的に徹夜などの無理が効かなくなってきます。

35歳】人生最大の分岐点

35歳は、医学的にも社会的にも大きな節目です。

  • 歴史的背景: お釈迦様が悟りを開いたのも、古代ギリシャの結婚適齢期も35歳。若者衆から年寄り衆へ移行するラインです。
  • 身体変化: 血液検査で基準値を外れる項目がチラホラ出始めます。回復力(ホメオスターシス)が低下し、徹夜どころか少しの無理が翌日に響くようになります。
  • 脳の変化: 「頭の回転(スペック)」は落ち始めますが、その分「経験」や「気長さ」が身につきます。孔子のいう「三十にして立つ」時期です。

40歳~45歳】老化のサインが可視化される

  • 40歳: 男性を中心にお腹が出てきます(メタボリックシンドローム)。
  • 45歳: まるでタイマーがセットされていたかのように「老眼」が始まります。目の酷使とは関係なく、生理的な変化としてやってきます。

50歳】セカンドライフへの転換期

女性は閉経を迎え、更年期症状が顕著になります。男性更年期もあります。 織田信長が「人間五十年(敦盛)」と舞ったように、戦前や昔の感覚ではここが寿命の一つの目安でした。現代はここからあと30年、40年生きなければなりません。 50代で若い頃と同じ働き方をしていると、心身がついていかず「本物のうつ病」になるリスクもあります。ここでは「適度にサボる技術」や「働き方のシフトチェンジ」が必要です。

3. 若い頃の「無茶」と「貯金」のジレンマ

若い頃に体を鍛えておくことは、中高年になった時の「健康の貯金」になります。筋肉や骨密度を高めておけば、季節の変わり目の不調などにも強くなります。

しかし、「無茶のしすぎ」は借金になります。 人間の体は受けたダメージを記憶します。若い頃の怪我や酷使は「古傷」となり、忘れた頃に痛み出したり、変形性関節症の原因になったりします。

とはいえ、「老後のために若いうちはおとなしく過ごす」のが正解かといえば、そうとも限りません。若い時にしかできない経験で命を燃やし、実績や地位を作っておかないと、社会的に詰んでしまうこともあるからです。 「太く短く」か「細く長く」か。 正解はありませんが、自分の体がどう変化していくかを知った上で、リスクを取るかどうかを選ぶことが大切です。

4. なぜ「整形外科的」な予防が必要なのか?

国の定める特定疾病には、がんや糖尿病などの生活習慣病が含まれていますが、整形外科疾患(運動器疾患)は予防医学としてまだ未発達です。 しかし、高齢になってQOL(生活の質)を著しく下げるのは、実は**「動けなくなること」**です。

  • 脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア
  • 変形性膝関節症、股関節症
  • 骨粗鬆症、圧迫骨折
  • ロコモティブシンドローム、サルコペニア(筋肉減少)、フレイル(虚弱)

これらは薬を飲めば治るものではなく、一度構造が壊れると元に戻らない(不可逆な)ことが多いのです。歯磨きで虫歯を防ぐように、若いうちから「骨と筋肉のケア」をしておく必要があります。

5. 結論:人間は最後、物理的な「機械」の問題になる

PCなど使っていると最初に請われるのは機会の部品です。それと同じか分かりませんが人間も機会の部分、物理的な部分が最初に壊れてADLQOL、健康寿命、障害寿命の律速段階になります。結局最終的に人間を規定するのは**「物理的・機械的な構造」といってしまっていいかもしれません。

  • 心臓・血管: ポンプという筋肉と、パイプという管の劣化。
  • 肺: 肺胞という精密なフィルターが壊れれば再生しない(肺気腫など)。
  • 腎臓: ろ過装置のフィルターが詰まれば終わり。
  • 運動器: 筋肉がなければ、脳からの指令も実行できない。

認知症が進み、脳の機能が衰えると、「食べる」「歩く」といった基本的な動作指令すら出せなくなります。しかし、脳が元気でも、足腰という「駆動系」が壊れてしまえば、人間は動けなくなり、そこから一気に全身の衰えが加速します。

「歩けなくなったら終わり」 少し極端な言い方ですが、自分の足で歩く能力を維持することこそが、最強の予防医学であり、精神衛生を保つ鍵でもあります。 人生100年時代、この「生体機械」をどうメンテナンスして最後まで使い切るか。その視点を、今から持っておいて損はありません。

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