2009年9月6日日曜日

原始仏教と現代哲学の近縁性

仏陀(シャカムニ)が悟りを開く前に抱いていた問題意識というのは、人間はどうしたら苦しみとそれが死ぬことによっても終わることがないということであった。
釈迦の生きた世界の倫理思想は輪廻転生の世界観を持っていたので、苦しみは必ずしも死ぬことで終わらせることはできない。
釈迦が悟った内容は、輪廻転生は存在しないということである。
それにより認識として輪廻転生観の拘束から逃れることができ、輪廻転生の輪の中から解脱することができた。
釈迦が輪廻転生観を乗り越えるために悟った内容は次のようなものであった。

・同一性概念への批判
・相依性の世界観(現代思想では構造主義、記号論的な見方)

世界や事物は相依って成り立つものでそれ単独での実在というものはないという考え方は現代思想の構造主義の考え方と類似である。

釈迦は輪廻転生の思想を乗り越えることで悟りを開き解脱した。
輪廻転生を行うためには、主体、自我、身体は魂の乗り物であるというような見方、自己同一性形成が前提としてあり、輪廻転生を行う主体としての魂の存在を前提にしなければならない。
釈迦は五蘊説をとなえることにより、身体を入れ物として存在する魂というような考え方を排した。

次になぜ人間は自己同一性=自我認識=魂のような主体性を持つ人間観、を形成してしまうのかが問題になる。
これに対して釈迦は十二因縁生起説をとなえた。
これは現代思想におけるラカンのシェーマLモデルと比せられるモデルであって、人間の認識=同一性形成がどのように行われるのかについてのモデルを作りあげた。
諸行無常や諸法無我などは、現代思想で言う自己や他者の同一性や恒常性に対して世界に対するそれとは異なる見方を示している。
万物は、自己も含めて一瞬たりとも同じであるという考え方には根拠がなく、一瞬一瞬変化しているという考え方も変わらないものがあるという考え方と同様に可能であり、そのような考え方に基づいた社会思想や制度、個人の生き方も設定かのうだが、近代西洋世界では対象の同一性と恒常性の思想がメインの潮流としてあった。
また色即是空、空即是色というのはドゥルーズ・ガタリのコード化/脱コード化、領域化/脱属領化など、あるいはデリダの脱構築と比べられる概念と川なる。
釈迦のこれらの考え方は、現代哲学における同一性の捉え方と構造主義的な考え方と相同なものである。
時代の支配的な思潮との比較でいうと仏教はその時代にベースとしてあり支配的であったインドの思想、バラモン教の考え方やウパニシャド哲学、その時代のインドの人々の思いなしからなる思想の一部に対してそれを否定する思想を作り上げた。
一方で現代哲学は近代以前に支配的であった確実性への思い込みや形而上学、同一性の原理などを批判し、それとは異なるものの見方や倫理思想などの新しいモデルを提供する。
このような面でも現代思想と原始仏教は大きな重なりをなす。

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