2009年9月27日日曜日

統合失調症と現代思想

統合失調症と現代思想はとても関係が深い間柄にあります。
ラカン、ドゥルーズ=ガタリなどの多くの現代思想家が統合失調症に対して思考の焦点を当てています。
現代思想において統合失調症がなぜ重要なのかというと、一番大きな理由は彼らが統合失調症という病気を認識生成機能の障害、同一性形成の障害と考えたからです。

現代思想では認識や同一性形成というのは大変大きなテーマです。
認識や同一性機構が事物の実在感や確実感を作り出します。
物理的な物の実在や存在の確実性については普通生活している範囲での日常世界ではあまり問題にする必要はないでしょう。
しかし人間が確実感を感じる対象というのはもっと抽象的なものもあります。
自己とか他者とか人間とか歴史とか善悪とか価値観とか正義とかそういったものを人間は形成します。
例えば自己同一性や他者恒常性と呼ばれるものです。
現代思想では同一性や恒常性は人間が作り出すものです。
現代の高次脳機能研究的な言い方で言うと、脳が、皮質が作り出すものです、というと面白い言い方になると思います。

統合失調症では認知機能障害が症状としてあります。
精神病というのは昔は狂気などとも呼ばれ、病者の言っていることが非病者には理解できない、非病者の言っていることが病者には分からないなどの特徴があると思われていました。
現代思想ではこの後者の病者の理解力の不全、その原因ともなっているのが認識と同一性の形成障害であり、それが疾患の中核症状であると考えました。
現代思想では統合失調症では時に認識や同一化がうまくできない、あるいは認識や同一化が歪むという風に考えます。

現代思想、特にポスト構造主義の思想では、認識や同一性の生成について自覚的であること、さらには生成された認識や同一性を解体すること、これを脱構築とか脱コード化とかその他いろんな言い方をしますが、認識や同一性に支配されないこと、それらの生成と解体をコントロールすることが重要なテーマです。

高次脳機能研究でもラカン的な見方によっても、ある意味我々の認識というのは錯覚のようなものです。
我々は何かを認識したと思うとき、何かを認識したと思う誤解の上に生きています。
瞬間瞬間大脳の形成した認識という勘違いの上で生きています。
統合失調症の患者は別の面から見ると大脳皮質にある点では騙されていない人々であると考えられます。
実際統合失調症の患者では公理主義的な思考強迫があったり原理的な問題を考えずにはいられないないことが発症に繋がったり病期の間に患者の重要な問題になることが多く見られます。

現代思想では統合失調症のこのような面を見て、そこから学ぶべき点があると考えました。
ラカンでは、シゾイドやパラノイドという人間の精神の分析方法が語られます。
ドゥルーズ=ガタリではさらに社会分析や実践が語られますが、それは認識や同一性に支配されず、それらをコントロールしある程度自由に認識や同一性の生成や解体を繰り返す生き方です。l

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